校長室より
「大野晋先生」
◆言語学者の大野晋先生の訃報を聞いて
◇私が時々読む傾向の本に、言葉に関係する本があります。元々は、「日本語はどこから来たのか」という疑問から生まれた興味です。
◇韓国が外国への渡航の制限を緩めた頃、韓国銀行の寮が私が勤めた学校の学区域にできました。今では、珍しくなくなった「韓国からの転校生」をその時に受け入れました。
子どもは日本語が何も分からず、私は隣の国なのに、韓国のことをほとんど知らず、という状態でした。韓国語と朝鮮語の区別もわからず、辞書を買うのも大変でした。当時は、「韓国語」という語学や辞書は多くなく、「朝鮮語」とひとくくりにされていました。韓国に旅行した人が、「朝鮮語」の辞書を持っていて北朝鮮のスパイに間違われたという時代です。
◇転入生は6年生でした。私は手探りで受け入れました。その時に韓国語の勉強を始めました。もっとも私の学習スピードの何十倍も速い子どもの日本語上達のお陰で、後半はあまり混乱することなくすみました。
◇以来、細々と韓国語の勉強を続け、韓国学院の初級検定(韓国の認定と同じ)に合格しました。その過程で生まれてきたのが、「日本語はどこから来たのか」です。韓国語と文法がほぼ同じなのに、固有語がかなり違うのはなぜかが疑問だったのです。
◇この疑問が元で、言語と歴史の世界にのめり込んでしまいました。特に、歴史は古代史から弥生時代を経て飛鳥・奈良あたりまで。言語はさまざまな「源流」の本や日本語にまつわる本を読みました。その中には、大野先生の本もありました。
◇特に、大野先生の日本語タミル語源流説はとてもおもしろかったのです。批判はあれどロマンがありました。夢中で読みました。この説を、朝鮮半島に伝わる伝説で王子と結婚したという南の国のアユタヤ王女伝説や中国の少数民族の文化との比較との関係まで、色々と自分勝手に発展させて楽しませてもらいました。亡くなられて大変残念に思います。
◇大野晋先生のご冥福をお祈りいたします。
7月16日 No.589